中国酒の歴史と伝統

  • 長江流域から始まる
  • 中国伝説の王朝
  • 臥薪嘗胆が生んだ紹興酒

約14,000年前、長江流域で農耕が始まった。中国酒の歴史も、ここから始まる。

中国酒の歴史と伝統

約14,000年前、長江流域で農耕が始まった。中国酒の歴史も、ここから始まる。


酒づくりは農耕の歴史と切っても切れない仲。その起源を巡っては世界中に諸説ありますが、約14,000年ほど前、中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が始められていたことが1995年の発掘調査により確認されたと言われています。これが人類最古という説も。稲作と同時に定住生活が可能になり、くわえて度重なる河川の氾濫と干ばつから貯蔵の習慣が起こる。しかし中国の黄土は気孔が多いため洪水に遭っても水はけがよく、蔵の穀物は一度水に浸ったうえに地温の温もりで発芽を始める。残っていた水分に刺激されて発酵が始まり、芳香を放つ液体を試しに飲んでみると…美味い。こんなプロセスが酒の起源ではないかと語られています。醸造の歴史はいまだ定説を見ていませんが、出土している陶器などの状況から、仰韶文化期(ぎょうしょうぶんかき/紀元前4,800年ごろ~紀元前2,500年ごろ)には酒づくりが行われていたことが推察されるとのこと。じつに中国ではいまから7,000年ほども前から心地よい酔いを楽しんでいたのでしょうか。

中国伝説の王朝「夏」と、地の利を得て花開いた稲作文化と紹興酒。

1973年、古代越国の都会稽(かいけい)、いまの紹興にほど近い河姆渡(かぼと)遺跡で紀元前4,700年前の稲作遺跡が発見されました。新石器時代前期のものです。つまり、有史のはるか以前から紹興で米がつくられていたということ。さらに治水の功績によって中国伝説上の最初の王朝である「夏(か)」の始祖となったとされる禹(う)が祀られているのも紹興。これは何を意味しているのでしょう。その昔、長江の流域は度重なる洪水に悩まされてきました。しかし、国土の多くが山岳地帯である日本と違い、中国の洪水はじわじわと土地を浸食するタイプ。そして稲作は水田という水を張った田んぼで行われる耕作。しかも紹興をはじめとする浙江省は雨の多い地域。このことから、禹の治水事業は稲作の発展と深い関係があったと推理できるのではないでしょうか。そう考えると紹興酒という稀代の文化がこの地で花開いたのは、まさに天と地の大いなる意志だったのかもしれません。

中国伝説の王朝「夏」と、地の利を得て花開いた稲作文化と紹興酒。

酒を醸す甕からできた?「酉」という漢字のルーツとは。

醸したものを酌されて、その醇なるうまさに陶然と酔う…。酉のつく漢字には、お酒にまつわることが数多くあります。しかし「酉」の字がなぜお酒に関係あるのか。紀元100年ごろに成立した中国最古の部首別漢字辞典といわれる『説文解字(せつもんかいじ)』によると、酉という漢字は口の広い大甕をかたどった象形文字が起源であるとのこと。その解説には「酉は就るなり。八月に黍成り、酎酒を為る」とあり、さらに「酒」は2つの文字を合成したものとして「秋八月黍成るや、水に混じりて醸成する。故に水と酉とを合わせて、その意を表す」とあります。ちなみに「酒」で漢和辞典をひく際は「さんずい」ではなく「とりへん」として扱われていることに注意。もともとは彡が右についていたのだそうです。

酒を醸す甕からできた?「酉」という漢字のルーツとは。

兵は、川に流された酒で士気を高めた。臥薪嘗胆が生んだ紹興酒。

中国の故事成語は日本でも有名。そのひとつ、臥薪嘗胆。硬い薪の上に寝て夜を過ごし、苦い肝を嘗めて思いを遂げる日を待つ。この言葉に紹興酒のルーツが隠れているとしたら驚かれるでしょうか。いまから約2,400年前のこと。ときの周王朝が衰えて中国各地は春秋時代といわれる戦乱に突入していました。その中で越国と呉国はお互い覇権を争う長年のライバル。呉王の夫差(ふさ)は計略により父を殺され、薪の上に寝て復讐の日を誓います。やがて立ち直った呉は越に攻め込み、滅亡寸前まで追い込みます。かろうじて処刑を免れた越王の勾践(こうせん)は、夫差の召使へと身を落としながらも何とか越に戻り、7年ものあいだ日夜苦い鹿の肝を嘗めて「会稽(現在の紹興)の恥を忘れるな」と誓いました。これが臥薪嘗胆のいわれ。そしてついに勾践は昔年の思いを遂げるために挙兵し呉に攻め込み見事勝利を遂げますが、このとき川に酒を流して兵士たちに飲ませ、大いに士気を高めたといいます。「越王の栖むや会稽なり、酒有り江に投ず、民その流れを飲みて戦気百倍す」と呂氏春秋の順民篇にある酒が、すなわち紹興酒。川に酒を流して兵に飲ませるとは何とも中国らしいスケールの大きい話ですが、いまでも紹興の街には投醪河と呼ばれる川があるとか。ちなみに呉と越といえばもうひとつの故事成語「呉越同舟」もよく知られています。同じ酒を汲みあえば心もうちとける。そんな解釈も楽しそうです。

書道の祖とされる王羲之。「蘭亭序」はあまりにも有名。

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