伝統と近代化・古越龍山製法

  • 原料と仕込み
  • 発酵
  • 貯蔵
  • 出荷・絵付け

伝統と近代化・古越龍山製法…原料と仕込み

契約農場制度で、安全な糯米を確保。

契約農場制度で、安全な糯米を確保。

紹興酒とは、糯米(もちごめ)で醸す酒。国賓接待酒としてのプライドのもと、古越龍山になる原料米は、契約する厳選された栽培農家で丁寧に育てられた安全な糯米を使用しています。地元浙江省はもとより、隣接する江蘇省、安徽省、湖北省の農家から政府の選抜によって栽培契約を結び、大規模な原料基地を設置。契約農家には栽培方法や農薬の種類、使用法を事細かく指導し、基準の遵守はもちろん記録までつけさせる徹底ぶり。それだけではありません。収穫後も、残留農薬や遺伝子組み換えの検査を行い、厳格な基準をクリアしたものだけを原料として使用しています。これは当然日本の基準も越えたもの。安全なものだけが国際的な信頼を得る。偉人の里・紹興だからこそ受け継がれている哲学かもしれません。

銘銘酒を育むために天が与えた「鑑湖」。

銘酒を育むために天が与えた「鑑湖」。

「銘酒出處、必有良水」…。"銘酒あるところに良水あり"といういにしえより語り継がれてきた言葉が示すように、世界のさまざまな銘酒と同様、紹興酒も酒の神様が与えてくれた天然の良水によって醸されます。その命のみなもとは紹興市のはずれにある「鑑湖(かんこ)」。湖と呼ばれるものの、じつは36もの支流が流れ込む川の途中が広くなっている部分。会稽山系からの有機分が少なく硬度の低い湧水は、まさに酒づくりには格好のもの。加えて湖底には大量の鉱物質や泥石炭層があり、これらが自然のフィルターとして浄化作用を促しているといわれています。これこそ紹興酒が別名「鑑湖銘酒」といわれるゆえんです。いまでは清らかな水を満々と湛えた風光明媚な景色から観光地としても人気を集める鑑湖。古越龍山の豊かな酔い心地は、この天賦の才によって育まれます。

古越龍山に命を吹き込む仕込み。

古越龍山に命を吹き込む仕込み。

11月初旬、寒さが増す頃になると、いよいよ古越龍山の仕込みが始まります。厳しい検査をクリアした糯米の出番。それも、浸漬に適した新米のみが選ばれます。素材の新鮮さを大切にするとともに、収穫後、時間が経った糯米は水を含ませるのに時間がかかり、変色や蒸しムラが起こる場合があるから、というのがその理由。そして気温によって10~20日ほど鑑湖の水に浸漬されると乳酸発酵を始めます。いよいよ水を切って蒸しの工程へ。昔ながらの製法は多くの人力により甑(こしき)で蒸し上げますが、現在は連続式蒸米装置が1日に55トンもの作業が可能。古越龍山ではどちらの製法も平行して採用しています。さて、さらに酒母と麹を加えて500リットルの大甕に仕込みますが、このとき、浸漬に使った水を「奨水(しょうすい)」と呼んで再利用するのが紹興酒のやりかた。すでに乳酸発酵していることから雑菌の繁殖を防ぐ効果があり、昔からの知恵と経験が、そんな合理的な技を生み出したのです。

伝統と近代化・古越龍山製法…発酵

一定の品質を守り抜くために、地上5階建てもの巨大タンクをつくった。一次発酵。

一定の品質を守り抜くために、地上5階建てもの巨大タンクをつくった。一次発酵。

下をのぞくと、金網の足もとに思わず腰が引ける。ここ古越龍山の第3工場では、なんと地上5階建てもの巨大タンクで発酵する紹興酒を管理しています。年間生産量約15.5万キロリットル。第2位メーカーの約3倍弱もの生産量を誇る国際ブランドならではの責任として、一定の品質を守るための施設です。タンクの中を覗き込むと、生まれたての酒が呼吸しているのが聞こえてきます。この近代的な施設と合わせて、また別の場所では昔ながらの方法で作業が行われているところ。紹興酒の一次発酵は、大甕で通常5日ほど。50~60時間でデンプンは糖化されて溶け出し、甕の底にアルコール度数の低い甘酸っぱい液が溜まります。発酵の度合いを見ながら奨水と鑑湖の水を追加し、まる1日強ののち櫂(かい)を入れて撹拌。これは開耙(かいぱ)と呼ばれ、非常に重要な作業。発酵によって熱が出た状態を冷却し、一定の温度に保つ役割があります。ちなみに大容量で一次発酵させるのは、発酵を始める際に小さな甕では十分に温度が上がらず酵母が活性化しないため。大容量でしっかり温度を上げながら、開耙を入れることで空気を送り込みながら適度に冷却しつつ酒を育てているのです。

伝統的な手数と、安全のための近代化と。二次発酵。

伝統的な手数と、安全のための近代化と。二次発酵。

ごくわずかな愛好者のためだけに醸すのなら、昔ながらの手法だけに通底していれば事足りるでしょう。しかし古越龍山は国際酒。正しい造りと量産…この両者を高いレベルで維持しなければ、国賓はおろか、舌の肥えた世界のマーケットに供される酒には到底なれません。約5日間の一次発酵を終えた古越龍山は二次発酵へ。古来よりこの段階では24リットルの小ぶりの甕に移し替えられ、蓮の葉と茶碗のみで蓋をされて屋外で約90日の時を過ごします。「もろみ」の発酵で生じた炭酸ガスを酸素と入れ替えるために、あえて雨と異物の混入を防ぐ程度の軽装備で晩秋から冬への時を過ごさせるのです。古越龍山は、この工程を伝統的な手法に加え独自の近代的な機械生産方式でも確立。人の手と機械の手。どちらも世界に名だたる紹興酒づくりの上での「掟」を守っているのは言うまでもありません。

伝統と近代化・古越龍山製法…貯蔵

東京ドーム約4.3個ぶんの敷地に、おびただしい量の銘酒が眠っている。

東京ドーム約4.3個ぶんの敷地に、おびただしい量の銘酒が眠っている。

「ここに出荷を待つ古越龍山が眠っています」。そう言われても、視線のはるか先にまで同じような倉庫が延々と続いている。聞けば東京ドーム約4.3個ぶん(205,000m2)もの広さがあるといいます。それがどのような広さなのか、残念ながら実際に見ることなしに想像するのはほとんど不可能でしょう。そのうえ、全18棟あるという倉庫の中をのぞいてみると、おびただしい量の甕が隙間ないほどに積み上げられている。総数約560万個。ただし、これはこの中央倉庫に置かれている数のみ。古越龍山全体では約1000万個にものぼり、一列に並べると広州と北京を往復するほどの量だと言います。1952年、時の周恩来首相は、紹興酒の国家的な価値に目をつけ、保護と振興を促しました。その証しとも言えるのがこの倉庫。中に入るとひんやりとした空気。ここでは単に置いておかれるだけでなく、毎年1回、上の甕を下に、下の甕を上に…と貯蔵環境の均一化を図っていると言います。口で言うのは簡単ですが、圧倒的な量をこなすにはそれこそ毎日のように手をかけていなければできない作業。古越龍山は、かくも大切に育てられている銘酒なのです。

半世紀も、テーブルに供される時を待っているそんな酒がある。

半世紀も、テーブルに供される時を待っているそんな酒がある。

倉庫の中に入ると時が止まったような感覚になる。紹興酒は3年以上寝かせたものを「陳年」と称しますが、かかっているプレートを見ると、「五十年以上陳年黄酒」の文字。そう。ここには、じつに半世紀も前の酒が置かれているのです。どこか厳かな雰囲気に、時代を感じさせる古いデザインの50リットル甕が積み重ねられています。また倉庫内をよく見てみると、「佳醸」と表示されているプレートが。この特別な一角には、他の年より優良と判断された紹興酒が貯蔵されているとのこと。しかも一見無機質な甕も、じつはゆっくり呼吸しているのだそうで、それが「浸み出し」に現れます。しっかり蓋で閉ざされた陶器製の甕もミクロの目で見ると鉱物であり、中の紹興酒が深呼吸をするようにゆっくりと生きているという証左。若干の浸み出しがある甕の方がおいしいという説もあるほどで、ますます深い紹興酒の歴史が感じられます。

伝統と近代化・古越龍山製法…出荷・絵付け

厳格な衛生管理。たぐいまれなブレンド技術。さまざまな古越龍山が出荷を待つ。

厳格な衛生管理。たぐいまれなブレンド技術。さまざまな古越龍山が出荷を待つ。

早いもので3年、さらに酒齢を重ねた50年ものなど、さまざまに歴史を積み上げた古越龍山が、いよいよ出荷の時を迎えます。この際に重要なのがブレンダーの仕事。原酒の感応評価からブレンドの指示など大きな役目を持ち、この資格は各社それぞれに独自の決まりがありますが、基準となるのは中国政府が認める「国家級黄酒評酒委員」。この称号は、中国醸酒工業協会が通常5年に1度中国全土の黄酒製造企業と関係業界の専門家を対象に、厳しい試験を行い選出するものです。現在中国に38名存在し、そのうち6名が古越龍山に籍を置いています。さらに、その中でも特別な技量を持つのが「中国醸酒大使」。黄酒業界でただ一人の最高技術者の名誉と呼ばれる称号です。原料の糯米の栽培から始まり、あらゆる点で醸酒業界全体に助言する立場を兼ねながら、古越龍山で世界をうならせる酒づくりに心血を注いでいます。その厳しい目で徹底的な衛生管理を施され、信頼される国際酒として出荷される銘酒たち。中国の威信をかけた、どこに出しても恥ずかしくない酒を届けるため、つねに努力を重ねています。

中国の歴代王妃たちのように、あでやかに衣を纏っていく。

中国の歴代王妃たちのように、あでやかに衣を纏っていく。

紹興酒といえば、化粧甕のあでやかさも大きな魅力。昔、この地域では、女児が生まれると黄酒をつくり、生まれて1ヶ月目に当たる満月の日に親戚などを呼び、一緒に酒の入った甕を土中に埋める風習がありました。娘がすくすくと育って嫁ぐことが決まると、甕を地中から掘り出して嫁入り道具として持たせるのです。一生幸せな人生を送るようにとの願いがこもったプレゼント。甕は美しく彫刻され、結婚を祝福する。これが花彫酒と呼ばれるゆえんです。この風習は4世紀初頭からあったとされ、壮麗な甕を見ているだけで中国の歴史を感じます。また特別な祝いには巨大な絵付け甕がつくられ、中国紹興黄酒節などには人がすっぽり入るほどのものが披露されます。

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